大変だね
「カネに操られるタイプでした」-。上海市郊外の青浦刑務所で元死刑囚の日本人男性(37)が服役している。役者を夢見て上京したが、ギャンブルで身を持ち崩し、覚せい剤の「運び屋」に転落した。現在はただただ異国の刑務所で悔悟の日々、望郷の念を募らせるばかりだ。
熊本県で生まれ、十五歳で上京。劇団に所属し、二十歳で初舞台に立った。エキストラだがCMに出演し、ドラマや映画でも端役を与えられたという。
夢の実現を遮ったのは、膨れあがった借金だった。競馬や競輪での負けが込み、友人と始めた不動産業でだまされもし、総額は七百万円を超えた。
上京当初、毎日約十三時間、居酒屋で働き、年収約六百万円。「もらいすぎだった。世間知らずの若造で、金銭感覚がまひしました」。業者の取り立てから逃げ友人宅を転々としていた時、友人に中国人を紹介された。
「少し危なっかしい仕事だけど、月々の借金返済を肩代わりして、月額三十万円あげる」。「危ない」という言葉は聞かないふりをして二〇〇二年四月、中国を初訪問。日本に運ぶ荷物はDVDプレーヤーだった。日中間の往復は十六回目となった〇三年十一月七日、上海・浦東空港の税関職員が、機械から覚せい剤一・五キロを見つけた。
「想像しなかった」。いや、あえて考えないようにしていたのだろう。偽造旅券で渡航していたのだから、犯罪の認識はあった。
〇五年二月、上海市高級人民法院(高裁)で、死刑判決が確定した。ただ、執行猶予が付いた。服役中、問題を起こさず二年が過ぎ、無期懲役に減軽された。その後、さらに減じられ現在、残りの懲役は十七年三カ月。
刑務所では、日本人十数人を含め外国人百数十人が収容されている。中国人よりも待遇は良いが、食事にたばこの吸い殻やごみが日常的に混じる。「母国の施設より良い」と言うアフリカ人もいるが、日本人にはつらい。
中国語は片言しかできないため、刑務官との意思疎通が難しい。刑務官から厳しくあたられると「日本人だからか」と思わずにはいられない。
楽しみは外部から手紙や差し入れが届くことぐらいだが、両親とは疎遠で、連絡を取り合える人は少ない。「駄目もとで各方面に手紙を出したが、世間は私を犯罪人としてしか見てくれません」
「日本の刑務所に移りたい。日中間で受刑者を移送しあう条約を結んでほしい」。ただ、中国側の統計によると、日本で中国人千四百数十人が服役中で、中国で服役中の日本人四十二人の三十倍以上もいる。経費負担の面から、中国政府は条約締結に後ろ向きだ。
警察庁によると、昨年摘発された薬物の「運び屋」百二十七件のうち約八割は暴力団と無縁の市民だった。「今の日本で、私のような人は少なくないでしょう。中国では薬物犯罪の死刑執行が続いていますが、追い込まれた人間は、そこに考えが回りませんから」
<海外で身柄拘束中の日本人> 外務省海外邦人安全課によると、海外で死刑や懲役、禁錮刑のほか、未決勾留で身柄を拘束されている日本人は計127人。今年1月1日現在、中国には42人がおり全体の3分の1を占める。多くは薬物犯罪に関与したとみられる。中国政府は薬物犯罪に厳罰で臨んでおり、今年4月には麻薬密輸罪で日本人4人の死刑が執行された。日本人による薬物犯罪は後を絶たず、4月以降だけでも11人が麻薬密輸容疑で中国の公安当局に身柄を拘束されている
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